後継者不足の主な理由
昨今、中小企業の後継者不足問題がクローズアップされており、その要因として少子化による後継者である子息・子女の減少や、ライフスタイルの多様化による子息・子女の意識の変化(事業承継を希望しない)などが挙げられています。 しかし、後継者不足は、低収益の割りにリスクが大きくて承継する魅力に乏しいことや、売り上げや利益に対して有利子負債が大きくて将来資金ショートする恐れがあることなど経営環境が厳しいことが原因であることが多いのが現状です。 厳しい状況にある企業を現経営者も継がせたいと思わないし、子息・子女も無理をしてまで継ぎたくないというのが実際のところかと思います。(有利子負債の大きい事業を承継すると、後継者まで共倒れになるリスクがでます。)
現状においては、これらの後継者がいない企業は、なんら手を打つことができず廃業するという方法を選択しているケースが大半です。しかし、廃業ということになると、従業員は職を失うといった大きな不利益を被り、
取引先は取引契約が無くなるといった大きな影響がでます。
この廃業という最悪のシナリオを避ける方法として、事業再生スキームを活用した事業承継があります。
事業再生スキームを用いた事業承継
事業再生とは、企業が倒産状態に陥った場合に、そのまま会社を清算するのではなく、債務の一部免除や弁済期の繰り延べなどを行いながら、収益力のある・競争力のある事業を再構築することです。
事業再生スキームを活用した事業承継とは、この事業再生手続を利用して後継者に事業承継する方法のことで、 有利子負債の圧縮等により再建の見込みがある場合に、再建計画を立てて事業の再生を行うなかで、後継者に事業を承継することとなります。
この事業承継方法のメリット・デメリットは次の通りです。
メリットとしては、
- 従業員の雇用を可能な限り維持することができ、また、長年続けてきた事業の灯火を消すことなく存続することができます。
- 再生手法として法的再生を利用した場合には、所有資産の価値を現在価値で承継できるため、後継者は、多くの場合において簿価で承継するよりもリーズナブルな価格で承継することができます。
逆に、デメリットとしては、(1) 事業再生の一環として金融機関等から債務免除を受けると現経営者は経営責任を明確にするという意味で退任させられる点と、 (2) 現経営者は銀行からの借入金の連帯保証人をしている場合、連帯保証人としての責任を負わなくてはならない点(廃業する場合も、連帯保証人としての責任を負う点は同様。)があります。