後継者の育成について

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後継者の育成について

後継者の育成は、ただ責任ある地位に就ければ十分というものではなくて、後継者として経営について学ばせる前に会社の行っている事業について理解をしてもらうため、 営業部門、製造部門、財務・管理部門等をローテーションさせて社内の様々な仕事を一通り経験をさせることが有益です。取引先企業等に就職させて、独自の人脈形成の機会を作ることも一つの方法です。

役職については、後継者の成長に合わせた職務や役職を与えるというやり方は、従業員や取引先の理解を得やすく、不釣合いな役職を与えて後継者が重責に押しつぶされる危険を減少させます。

経営に必要な能力の開発

経営に必要な能力としては、重要な経営判断に際して、確からしいと思われる判断を選択する経営判断能力や、予算管理や原価管理、資金繰り等の会社の数字を把握するのに必要な 計数管理能力といった財務に関する能力が必要です。
経営管理能力の開発については、手元にある情報をもとにしてその場では正解のない判断をするのであるから、ある程度先を見越して予想を立てて実行し、実績とのズレを検証し改善対応するという 経営の意思決定のサイクル(いわゆるPDCAサイクル)をまわし続けることで、予測可能性を養っていくことになります。
また、財務に関する能力の開発については、自社の経営環境を知るために必要不可欠であり、市販の書籍やコンサルティング会社が開催するセミナー等に参加して一度はきちんと学習する必要があります。

経営判断能力の開発

重要な経営判断に際して必要な能力である予測可能性を養うために最適な方法は、中期経営計画の立案とそれに基づくプロジェクトの進行であり、 後継者はこの責任者として将来に向けた会社作りを行いながら、経営判断能力を身につけていくことになります。
このプロジェクトには後継者将来支えていく幹部候補生を参加させ、後継者とともに経営ビジョン作りやそれを達成するための計画の策定、実行などの プロジェクトを一緒に行う中で、同時に自社の現状や将来のビジョンについて認識を一致するようになり、事業承継体制を構築することになります。

まず、第一段階として、創業の精神、企業の精神である経営理念を確認し承継することから始まります。経営理念は、会社にとっては憲法のようなものであり、 経営者が判断に迷ったときは、この経営理念に立ち返り、行うべきか行わないべきか判断する上位概念です。経営理念が明文化されていない場合には、 事業承継を機会に現経営者と後継者で話し合い、会社の理想像としての経営理念を確立するようにします。

経営理念が確立すれば、経営ビジョン、経営戦略、中期経営計画の策定を行います。
経営ビジョンの策定は、経営理念のもと、5~10年後に自社がどのような会社であるべきか目指すべき将来の企業像をイメージし、いかなる価値を市場や顧客に提供するのか、 経営のスタンスを明確にしていきます。
経営戦略の策定は、経営ビジョン実現のため、自社を取り巻く事業環境が今後どのようになるかを予測し、自社の置かれている状況や自社の強みと弱みを認識したうえで、 今後強化していく事業ドメイン(事業領域)を明確にし、自社の強みを生かすことのできる事業機会やビジネスチャンスを模索して、今後会社の進むべき方向性を決定します。
中期経営計画の策定は、自社の現状と5~10年後を念頭に設定された経営ビジョンとのギャップを埋めるための戦術の具体化作業で、 中期に会社が取り組むべき課題やその解決策を考え、解決策に基づいて行動計画(アクションプラン)を作ることになります。 この行動計画を部門別・個人別の行動計画にブレイクダウンし、部門別・個人別に数値計画も設定する一方で、同時平行的に、この行動計画に基づいて3年後、5年後の機能分担を想定した 組織図や人材を育成するためのプラン作りをして、計画を実行するための予算と管理体制を作ることになります。

このようにして策定した経営計画を現経営者より承認をうけ、アクションプランをスタートさせることになります。 プラン実行後に、経営計画の数値目標と実際の数字の差を確認し、また、個人別・部門別の行動計画の実行状況の確認をして、 計画と実績のズレの原因究明と修正をくりかえしていくことで、後継者や幹部候補生は経営陣としての能力を鍛えていくことが可能となります。

なお、創業オーナーの場合は、少人数のときから組織が拡大し成功体験もあるため、トップダウンという経営スタイルをとる会社が多いが、 周囲の誰もが認める成功体験のない後継者は、中期経営計画プロジェクトの推進と同時並行的に、組織の力で動く経営形態に変えていくこと、 すなわち、トップが感覚ベースで行っていた意思決定を、合理的な判断基準で意思決定をするように変えていく必要があります。